2012年3月 1日

言葉が足りない(1)

久しぶりの更新です。また嫌な季節になりました。年度末です。
なぜだか押せ押せでバタバタになってしまうのです、毎年。

特に、今年は、年明けからずっとある制作物にかかりきりでした。
小学生向け環境教育副教材です。
本格的な教材づくり、教育分野の仕事は初めてだったのですが、これが予想以上に手強くて。
どんなに噛み砕いて優しく書いているつもりでも、「子どもはわからない」とダメ出しされ、ある定義・用語・状況の説明を、普段何気なく使っている言葉を使わずに、別の言葉に置き換えて子どもにわかるように書くことって、何て難しいのだろうかと痛感しました。
はるか昔の教育実習を思い出しつつ、教育現場の「今」もわからないまま四苦八苦しながら、1時間(45分)の学習指導案(授業例)も作成しました(もちろん、最終的には現役の先生のチェックをいただきましたが)。

しかし、最近の小学校の教科書には驚きました。
参考にしたのは小学4年生の「社会」の教科書だったのですが、私の時代に比べて文章が減っています。代わりに、同じ年頃の登場人物の会話が多用されており、それを読むことで思考や学習活動が促されるよう工夫されています。それはそれで、効果的なのかもしれませんが、私はどうも小4の教科書にしては「幼稚」な感じを抱きました。どらえもんのキャラクターたちが案内する誌面には、子どもに媚びる大人の姿が透けて見えるような気もしました。

私が小学生の頃だって、教科書は決しておもしろいものではありませんでした。
文科省が方針を変えるたびに幾度もその内容が変更されてきた教科書ですが、「現代の子どもの学力に合わせて」なのかアベレージが下げ られていくのはどうなのでしょう。多少難しくても、そのハードルをなんとかして超えようとする時、学ぶおもしろさをを知り、知的好奇心が生まれ、学力がつくのではないでしょうか。いや、そもそも今の子どもたちは授業に集中させるのが大変、だから、子どもたちにいかに興味を持たせるかが優先される、ということでしょうか。

しかしながら、薄い教科書は1年間かけて学ぶほどの内容が詰まっているようには思えず、だからこそ、(ヤル気のある)現場の先生方は、研究資料や副教材を駆使して、内容の濃い授業をご自身の努力で組み立てておられるのですね。子どもたちの学力が向上するか否かは、教師の意欲と質による、と言われるゆえんはここに あるのでしょうか。一方で、学校では大したことが学べないから塾で補完…というより、塾が学力を伸ばす場になっているという現実も。
子どもを塾に通わせることのできる、一定以上の収入のある家庭とそうでない家庭の子どもの学力格差は広がるばかり。

そんな時に、別の衝撃的なニュース。なんと、マンガが読めない子どもたちが出てきているというのです。
マンガですよ、マンガ。どうして~?
元小学校長だった知人に尋ねてみると、「その通りです」
ゲームのような動きの激しい画に慣れてしまった子どもたちの脳が静止画のマンガに反応しないのか、セリフの流れをストーリーと認識しなくなっているのだそうです。つまり、コマとコマの間を自分で埋めて話をつなげる想像力が育っていないのです。その結果、一時教育現場で流行ったという4コママンガ(セリフを自由に埋めていく)は、今では教材に使えないとのこと。ああ、なんたること!

最近では、ゲームの効用を積極的にコミュニケーションやビジネス現場の問題解決に活用しようという、「ゲーミフィケーション」なる手法も出現。それもいいのかもしれないけれど、なんか違う。

必要なのは、「もっとたくさん本を読もう」、じゃないのでしょうか?
読書人口が減ってきているから何でもゲームでなく、若い時は無理やりにでも読書をさせることが大事では?
なぜならば、言葉を操る能力が、全ての学力の基礎になるからです。

近年、会話をしているハズなのにコミュニケーションが成り立たない、文章を読んでいるハズなのに内容が理解できない、文脈が理解できず誤解する……(大学教員の友人が、テストの設問の文章を理解できない学生がいて困ると嘆いていました)…そうした若者が増えてきているような気がします。

携帯メールの普及によって、“雑な”会話が可能になりました。極端な話、親しい間柄ならば、短い単語が並んだだけのメールで十分通じます。それが行くつくところは、「言葉の省略」と「語彙の減少」。
種々の媒体の記事、PRツールなどを見ても、どこかで見たようなフレーズや既視感のある言葉が並んでいることが多く、意味は通じるものの、心には響きません。

“なんとなく”言葉を使うことが多くなり、言葉に気を遣わなくなったことが、さまざまなコミュニケーションの弊害を生んではいないのだろうか。

そんな時、まさに私の言いたいことを代弁してくれているかのような、一冊の本に出会いました。

(2)に続く