2014年4月 1日

山と森の会

山形の天童市の事業者さんの商品づくり、着々と進んでいます。
開発プロセスは企業秘密。
ですから、いまはまだシークレット。
現在、「てまかえシスターズ」三女が、パワー全開でラストスパートをかけています。
事業者さんのほうでは、若いスタッフの皆さんを中心に、フル稼働中です。

この事業者さんの新ブランドのWebサイトも、私たち「てまかえシスターズ」で制作します。
オープンしたら、すぐにお知らせしますね!

さて、きょうのタイトル「山と森の会」について。
「てまかえシスターズ」次女の友人のIさんが、自社(造林会社)の森の50%を広葉樹林にしようと、「黄金の森』事業を宣言しました。

ちょうどIさんの会社の創立百周年の節目ということもあって、山や森に関心のある多くの意識の高い(ほとんど専門家の)方々にお集まりいただき、さまざまな知見を得て、具現化の方策を探りたいと、会を開くに至りました。
会の仕切り役(コーディネーター、ファシリテーター)を依頼された私は、Iさん、次女と実際に会って、またメールで幾度もやりとりを繰り返し、どのような会にするかを検討しました。

Iさんとお話しするうちに、除々に林業界の状況が見えてきました。
専門用語だらけ、いくつもの専門分野のタコツボ状態で、
問題は複雑化し、一般人との距離が広がってしまっている......。

なんだか似てるな。私が農業雑誌に関わり始めた頃、農業界に抱いた感覚に。
そう直観しました。

Iさんは他業種からのUターン組。
戻ってきて、由緒ある家業を継ぎました。

少しも木を大事にしない、していないこの業界が嫌いなんですよ

それが彼の心の声。

会の冒頭でIさんから「黄金の森構想」についてプレゼンするにあたり、ならば、いきなりこの問題意識から入ろうと決めました。

つまりは、木を大事にしながら、続けていくことができる山、森づくり、林業とは何か。
人間優先、人間優位でなく、木にとって、森にとっての幸せ、健康って何だろう。

それを考える会にしたい......。

できれば業界以外の一般の方々も交えて広く議論したいところですが、どうもそこにひとっ飛びに行くのは難しそうだと判断しました。理由は4つ。

1)山、森というもの対する一般人のイメージは憧れやファンタジー的な部分もあり、論点が拡散しがち
2)1)の点も含めてテーマが非常に壮大で深い。
3)山や森へのイメージと現実の林業界のギャップは大きく、その現状への理解という前提のない人たちを交えた議論は、混乱する(一般人には、まずはその現状への理解の説明・レクチャーが必要となる)。
4)山や森の現状を知らない人間が議論したことに、専門家は納得しない。


そこで、まずはIさんが捉える林業界の現実=前提の理解があり、Iさんと問題意識を共有できる人たちにお集まりいただくことに。
3月初旬、Iさんの会社のガレージ(木材の壁で囲んで改装。Iさんと仲間の手作りのちょっとカフェ風空間)に約20名ほどの林業の実践者および専門家の方にお集まりいただきました。

山と森の会(全体).jpg

皆さん、山、木、森について一家言ある方々ばかりです。たった1回で議論が尽くせるとはとても思えませんから、数回連続して行うことを前提としました。
進行上、用意したテーマ(問い)は次の3つです。
1)山とは何か
2)山は誰のもの
3)健康な森の原則づくり

作業の内容や具体的テーマについては、敢えて事前に参加者の皆さまにお知らせしませんでした。
なぜならば、用意した問いにその場でどう答えるか、あるいは答えられるか、ということが今回の会の本質であり、重要なポイントだったからです。

とはいえ、しょっぱなに「山とは何か?」と問われた皆さんは、かなりめんくらわれたと思います。
しかしながら、さすが意識の高い方々です。
年齢(2060代)も経歴もさまざまな方々がグループに分かれ、これらの深淵なる根源的テーマに正面から向き合って、真剣に深い洞察力を持って協働してくださいました。

理念なき産業でいいのか? しかし、理想では飯が食えない
とは、ある参加者の問題意識です。

その通りです!
しかし、理念なき産業として走ってきた結果が、今の林業界の状況なのでは?
であれば、まずは確固たる理念をつくり、共有し、それに基づく事業や商品化を行うべきなのでは?

このワークショップで重きを置いたのは、「コトバ」、です。

一般人との距離を縮めるためには、小さな子どもにでもわかるコトバで表し説明することが必要です。
難しいコトバでしか説明できない世界をつくり上げてしまうこと自体が、関係者だけの閉鎖的な世界に課題を押さえ込んでしまっていた要因の1つであると私は考えます。

小さな子どもにわかるコトバ=幼稚な表現。

ではありません。
でも、日頃難しいコトバの渦の中にいて、それを使うことが当たり前になってしまっている方々は、わかりやすくすること=レベルダウンするようで、どうも抵抗があるように見えます。

以前、小学生用環境副読本を創った時に痛感しました。
ある定義や事象を、易しいコトバで言い換えて説明するほうが、ずっと、ずっとむずかしく、面倒なんです。
そのくらい、難しい(漢字だらけ)のコトバ(=4字熟語)は、便利なんです、使うと。

今回のワークショップでは、わかりやすさ+「女子」がグッとくる表現に、汗をかいていただきました。
個人的には、いい年した女性が「女子」のくくりでキャーキャー言うのはなんだかなぁとの思いがありますけど......現実には、時代はやはり「女子」です。

"皮肉にも女性向きの方針を取れば、女性にも男性にも好ましくなるということだ"

と、『彼女はなせ「それ」を選ぶのか?』(早川書房)の中で、著者のパコ・アンダーヒルさん(店舗や顧客行動に関するリサーチ&コンサルタント会社エンバイロセル社の創業者およびCEO)も言っています。

柔らかい脳力が要求されました。

山と森の会(ボード).jpg▲「山は誰のもの」の問いへのあるグループから出されたこの答えには参加者からどよめきが。

終わった後、多くの方々が「とても新鮮だった」、「このようなアプローチは初めてだった」、「どんどん気持ちが盛り上がっていって、ワクワクした」と言ってくださり、ひとまず、ホッとしました......。

ある参加者の方は、こんな感想を言ってくださいました。

『山とは何か』、『山は誰のもの』と問われ、すなわちそれは『お前は何者か』と問われているのだと思いました。そしてその答えが書けない自分を恥じました。このところ、ずっと仕事の件でふさぎ気味だったのですが、きょうは誘っていただき、参加して、本当によかった。前が見えてきて明るくなりました

うれしかったですねぇ。
感動しました。
まさに、意図したところ、ドンピシャ!

山に関わる人たちが、「山とは何か」、「山は誰のもの」の問いに、どう答えを出されるのか。
ココが今回の肝であり、この問いに答えられなければ、先へ進めない。
すなわち、この2つの問いの答えを共有できないままで黄金の森の原則=健康な森の原則を論じることはできないと考えて進めてきました。

しかし、3つの問いを柱に会を進めて行こうということだけは決めていたものの、実のところ他はシナリオはなし、全てライブ、即興です。

また、各グループから出てくる意見を次女がその場でPCで入力、プロジェクターで投影して全員で確認しながら進めて行ったのですが、それも事前打ち合わせはしていません。
会の記録としてPCで議論を入力していた次女に、会の途中で、急きょ、私が無茶振りしました(笑)。

「パワポ画面にして、そこに各グループのまとめをどんどん入れていって」

結果的には、即座に新しい意見が反映され、それを確かめながら考えをまとめていくことができるということで、ご参加の皆さんにはとても新鮮だったよう。

「あのやり方は初めて経験しましたが、いつもやっているのですか?」

と、参加者の方から訊かれた時は、次女と2人で顔を見合わせ答えました。

「いえ、ぜーんぜん。きょうが初めて。打ち合わせなし、急きょ、その場で決めてやってみました」

それができるのが次女・竹森まりえなんです。
私は全幅の信頼を置いています。
スゴイです、彼女は、やはり。

とにかく。
これまでの林業や森林関係の議論にはなかった、根本のテーマをとことん追求し、理想だけでなく、実現可能な具体策へとつながる新しいステージを拓きたい。
愛媛発で、全国に、世界に発信したい。
そんな大それた思いと強い意気込みで、次回もやりますよ~。
今月中にでも第2回を開きたいと、いま、Iさんと次女が調整中です。