2012年11月21日

やっぱり女性ってすごいかも。

何を思ったか、1人旅してきました。
有名どころには行きたくなかったので、聞いたこともない駅のこぎれいな宿をネットで見つけて予約、早朝から電車でとことこ房総まで。

降り立ったのは、とある小さな駅。
そこでまた女性の細やかな気配りとセンスに改めて感動する場面に出会い、とても幸せな気分になりました!

駅に着いたのはちょうどお昼前。
通りを歩いて、1件のお蕎麦屋さんを見つけて入りました。

まだ誰もいない店内にはなぜかユーミンが流れています。明るい窓の向こうはすぐ海。
窓際に席を取って、海と空を舞う鳥たちを眺めながら、まったりと天ぷらそばをすすりました。

「あの交差点のところのお菓子屋さん、喫茶の文字があったんですが、お茶ができるんでしょうか?」
「ああ、あそこね、もう喫茶店はやめちゃったんですよ。この辺でお茶ができるところっていったら...うーん、ないですね~」
「......あのーここにしばらくいてもいいですか?」
「どうぞ、どうぞ」

快く長居を許してくださった女将さんのご厚意に甘えて、またも海を見ながら、PCを開きちょこっとお仕事。
そのうちに、地元のお客さまたちがちらほら来店。
さすがに、いつまでもここで粘っていてはお店に迷惑だと思い、帰り支度をして再び女将さんに尋ねました。

「このあたりに神社はありますか?」
「それなら、このすぐそばにありますよ」
清算をすませると、なんと、女将さん、玄関の外まで一緒について来て、「ほら、あそこ、あのホテルの裏側」と場所を教えてくださったのです。ずっと笑顔で気持ちよく応対してくださり、そのおもてなしがうれしくて、なーんとも幸せな気分に包まれたまま近くの神社へ。
誰もいない神社でゆっくり静かにお参りを済ませ、海岸沿いを歩いて散策しながら宿へ向かいました。

宿は素泊まりで予約、隣接のレストランで夕食を取ることにしました。
カウンターに案内され、メニューを見ると、居酒屋というよりも、雰囲気のよい家庭料理のお店という感じ。「金目鯛の煮つけ」があるかと思えば「煮込みハンバーグ」があったり、「豚ソテーのブルーチーズソース」、「魚貝いっぱいのパエリア」なんてのもあります。
メニュー表を見て悩んでいると、シェフの女性が「何でも、どんなでもできますから。ご飯ものだったら、たとえば煮込みハンバーグにご飯とみそ汁もできますから。臨機応変に対応しますから」と笑顔で声をかけてくださいました。
きょうは金目鯛が入っておらず、本日の魚も私にはあまり魅力的ではなかったので、メニューの中で目に留まった「房州ひじきのコロッケ」を定食にしてもらいました。

出てきたのは、直径4.5センチほどの丸くきれいなコロッケが3個。これにご飯(つやつやで最高においしかった!)とつみれ汁(彩りもきれいで、でも気取らず、胃袋にじんわり沁み渡る味)と自家製ぬか漬けがついてきました。
「コロッケは一応味がついていますので、まずはそのままで食べてみてください。足りなかったらソースをかけてください」

言われるままに、まずは何もつけずに味わってみました。
サクっと割れて、中には太い肉厚の大きいひじきがほくほくのジャガイモの中に入っており、うっすら塩味。その美味なこと! 味にとても品があるんです。盛り付けにもセンスを感じます。
聞けば、全員地元の主婦の皆さんで、メニューも全て自分たちで考案するのだとか。

千葉ロッテマリーンズが近くで合宿する時は、選手たちが時々食べにくるそうです。
スポーツ用品メーカーの社員が1カ月滞在した時は、毎日夕食を食べに来たとか。
「まるでうちのお父さんが帰って来るのと一緒。きょうは何食べさせようか、きのうがお魚だったから、きょうはお肉かなって、こっちで勝手に考えてあげて出すんですよ。毎日夕食が楽しみだって言ってくださって」
そりゃそうでしょう。私だってこんなダイニングがあったら、毎日通いたい、ここに帰ってきたいと思うもの!

食材は極力地場産。魚も鮮度のいい地物を使っています。

話ついでに、常連の1人である地元のお菓子屋の社長さんからいただいたという枇杷のバウムクーヘンまで、私も御相伴にあずかったり。

宿は予約してきたものの、併設のレストランについてはよく調べもせず、期待もせずにふらりと入ったのですが、いいお店見つけちゃいました! なんてステキな女性たちでしょうか。
対応もとても自然体。店側の都合や論理を決して押しつけず、どこまでも顧客の気持ちを思いやり、顧客の立場に立って、まるで家族のようにおいしい食を提供してくれるダイニング。

このお店の雰囲気も、吟味された素材も、料理の味も、全てが彼女たちの手によるもの。
すごいです、この町の女性たち。
もちろん、私が出会って感動したのは、お蕎麦屋の女将さんと、このダイニングの女性たちだけです。
でも、旅人の印象ってそんなものです。その土地でどんな人と語り合い、その時に何を話し、そこでどれだけ幸せな気分になれたか。そのことによって、その地域は宝物のような大切な思い出の場所として深く記憶に刻まれ、人はその地域の心からのファンになるのです。

目の前の人にただただ心地よく笑顔でいてほしいから、さりげない優しさで淡々と、でも全力で自分の仕事をする―――それが、ホンモノのホスピタリティなのかもしれません。