2012年4月14日

写真集『あなたとわたし わたしとあなた』

次々とページをめくりながら、私は溢れる涙を止めることができませんでした。
1人ひとりの、自然体の、生きている姿、表情から、働き、自ら生活費を稼ぎ、社会の歯車の1つであることへの喜びが、輝くばかりの強いエネルギーとなって、想いがけず、まるでたくさんの矢のように私に向かって飛んできたのです。

なんて、素敵な本でしょう!!

尊敬する障害者教育の第一人者・谷口奈保子さんより送られてきた、NPO法人ぱれっとの本、『あなたとわたし わたしとあなた~知的障害者からのメッセージ~』です。

DSCN0397.JPG

ぱれっとが経営する職場(おかし屋ぱれっと、スリランカ料理&BEER Palette、ぱれっとインターナショナル・ジャパン)、余暇活動の場(たまり場ぱれっと)・ケアホーム(えびす・ぱれっとホーム)・障害者と県除湯者が共に暮らす家(ぱれっとの家 いこっと)で活動する、働く、暮らす知的障害者の日常の何気ない表情、笑顔を捉えた写真には、それぞれ短いコピーが添えられています。

「守られるだけじゃなくて、だれかの役に立てるのはうれしい」
「働くのは楽しいことばかりじゃないけれどやめようと思ったことはない」

生きていくことはラクではありません。何のために生きているのか? 自分が生きていることに意義がある、他人の役に立っていると実感できたとき、他人に認められて初めて、人は生き甲斐を感じるものだと私は思っています(中には、権力欲や支配欲からおカネを儲けること自体に生き甲斐を見出している人たちもいますが)。

この本を閉じた時、心の底から湧きあがってきました。
ああ、生きててよかった!

 

1983年、「ぱれっと」の立ち上げは、自分たちが暮らしている普段の生活の中で、知的に障害のある人たちの姿が見えないという疑問から始まった。社会はいろいろな人たちで構成されているのに、なぜ街なかで知的障害者と触れ合うことがないのだろうか。そして間もなく、障害のある子どもたちを、厳しい社会から必死に護り育てようとしている家族の姿が見えてきたのである。

この世に同じ生を受けながら、たまたま障害をもったということだけで、人としてあたり前の生活ができないことの理不尽さを見て見ぬふりをすることはできな い、それが「ぱれっと」に集まった人たちの使命感だった。言い換えれば、障害者の人権に関わること。一般市民と共に解決しなければならない問題でもある。 ならば、彼らを社会に押し出して出会いを作ろう。「社会から護る福祉」から「社会に押し出す福祉」への発想の転換である(谷口奈保子『あなたとわたし わたしとあなた』あとがきより)。



各ページから語りかける知的障害のある皆さんのたくましくて、しなやかで、でも肩ひじはらず、私もそこに一緒にいるような。
ぱれっとの思想そのものだと感じました。

私は、あざとい、お涙ちょうだい的な「売らんかな」の本は好きではありません。そもそも手に取りません。
何の先入観もなく、ぜひ、ページを開いてください。
きっと、何かを感じていただけるはずです。

『あなたとわたし わたしとあなた~知的障害者からのメッセージ~』
(文・谷口奈保子、写真・寺澤太郎、小学館発行、1470円)
「ぱれっと」のHPからも購入可能です。
http://www.npo-palette.or.jp