2011年11月22日

倉敷で野菜スイーツ談義

ようやく晩秋らしい気候になった感じです。
北の地方からは雪の便りも聞こえてきました。

少し前になりますが、11月の最初の連休、倉敷のイベント「倉敷jam」の一環で開催された食のトークショーに出演しました。
倉敷jamは今年4年目を迎える市民の手づくりジャズ祭。5日と6日の2日間、町のいろいろな場所が会場となって、ジャズの音色が響きます。
▲倉敷美観地区

紅葉が始まったばかりの倉敷美観地区には、ゆったりした時間が流れていました。倉敷美観地区川沿い.JPG

夜になると、川沿いにキャンドルが並べられ、美観地区全体がとてもぜいたくなジャズの演奏会場に。橋の上ではストリングスジャズが、カフェではウクレレが人々を酔わせていました。倉敷jam.JPG

私が出演したのは、倉敷天満屋百貨店のバンケットホールで開かれた備中県民局主催のトーク&トーク。野菜スイーツを通して岡山県民の皆さんに野菜の、特に身近な地場野菜の魅力に気付いていただくのが目的です。

私のお相手は、世に「野菜スイーツ」というカテゴリーを創り出した、今大人気の美人パテシエ・「パテスリーポタジエ(東京・中目黒)」の柿沢安耶(あや)さん。私の役割は、長年農山村を歩いてきた人間として、現場を知る立場から、柿沢さんの野菜スイーツへの思いや彼女の魅力を十分に引き出すことです。

パテスリーポタジエのことはずいぶん前から知ってはいました。
でも、白状しますが、私、スイーツが得意ではないのです。
なので、なかなか食指が動かず、足も向かわず……。
今回 は「仕事だから」と意を決して(←大げさ)、事前に友人に「ポタジエでおススメのもの」、「私でも食べられそうなもの」をしっかりリサーチして購入、賞味しました。

結果、「あれ?」
ちょうど小腹が空いていた昼下がりの午後、3時のおやつに買い込んだポタジエのお菓子を1つずつ口に運んだ私は驚きました。
どれもイケるんです! 想像していた舌にどかんとくるあま~い味がありません。
それに、失礼ながら、使われている野菜の味がちゃんとします。
色付け程度、ちょこっと香る……なんてものでなく、ゴボウならばゴボウの、小松菜ならば小松菜のしっかりとした「野菜の味」がして、しかも合わせた異素材との 相性が抜群。ゴボウの香ばしさとカカオの風味がマッチして、口一杯に広がり鼻腔に抜ける時の感覚がなんとも言えません。1つの味が際立つのでなく、使われている素材全ての味がする。そのバランスが絶妙なのです。

なんと繊細な! なんとセンスのよいお菓子だろうか。何よりも1つひとつの野菜が大事に使われており、「愛情」を感じます。

一般に料理人と呼ばれる人たちは自身の思い描く料理やメニューに合う食材を探す人が多いのですが、たぶん、柿沢さんは逆。つまり、素材から自分のお菓子をイメージしてつくるパテシエではないだろうか。
きっと、「この野菜をどうにかして美味しいスイーツに仕上げよう」ということに闘志を燃やす(?)タイプなのでは?
……と勝手に想像。私の中でがぜん柿沢さんへの興味が大きく膨らんでいきました。

さて、当日。
トークショーは私が柿沢さんにインタビューする形でとても楽しく進行していきました。
会場の皆さんとも対話しながらの、あっという間の90分間。

私の想像は当たっていました。そしてやはりその点が一番の彼女の魅力でした。

特におもしろかったのは、地域スイーツのお話。
各地の地場素材を使ってお菓子を作るのですが、彼女のすごいところはとうていスイーツ素材に合わないだろうと思われるような野菜で見事素晴らしいお菓子をつくり上げること。
だから、各地で「これしかないのですが…」と出されたお題(素材)を異素材と上手に組み合わせて、たとえば白菜と甘酒でゴージャスで美味なロールケーキが出来上がってしまうのです。

しかも、このプロジェクト、レシピを提供するのは彼女ですが、地元素材で商品を作り販売するのは地元のお菓子屋さん。ヒットして収益が生まれれば、雇用の場も生まれるかもしれません。
単なる地元素材を使った新商品開発でなく、まさしく地域スイーツで地域活性化を目指す一大構想なのです。

食育体験で、柿沢さんが野菜嫌いの子どもたちと一緒にナスのコンポートを作ったら「おいしい!」と歓喜。その後、その小学校では野菜を食べる子が増えただけでなく、子どもたちが家庭で進んでお手伝いするようになった、ついには給食の食べ残しが減ったといううれしい声が聞こえてきたとか。

うーん、スイーツの魅力ですね。
いや、スイーツさま、見直しました(これまでゴメンナサイ)。

柿沢さん、楽しい時間と気付きを本当にありがとうございました!