2011年6月21日

いま大事なのは命をつなぐために何をするか

福島第一原子力発電所の事故後、私の中の日本政府と東京電力、そして日本のマスメディアへの信用は完全に失墜しました。
まさに国難と言われるこの時に、自己や組織の保身に走っているとしか思えない対応には情けなくて悲しくなります。
よしんばそれが苦渋の決断であり、本人が心から望んでいないものであったとしても、今なお多くの国民の命が危険にさらされている状況の中でも良心に従えず平気でいられる神経が私にはわからない。
それが本当に国益につながるのか? 国を守ることになるのでしょうか?
以前から日本にはジャーナリズムはないと思っていましたが、ただただ大本営発表を右へならえで流し続ける主要メディアに、この国に民主主義なんてものがなかったことを改めて思い知らされました。

最初から政府報道に懐疑的だった私は、インターネットからさまざまな情報を得て読み込むうちに、事態は楽観視できないと感じていました。残念ながらそれは的中してしまいましたが、今さらながら、海外の専門家たちのほうがよほど、政府や東電、原子力安全委員会、原子力安全・保安院よりも福島第一原発の状況を正確に把握していたのだと、国内の主要メディアに出ている御用学者さんたちのお気楽さにあきれるばかりです。

いたずらに危機を煽る云々のレベルはもうとっくに過ぎて、事実はとんでもない事態なのですから、この状況の中でいかにして国民の命を守るか、しかも第一に考えるべきは、この国の将来を担う若い命を守ること、命をどうやってつなぐかということに尽きると思います。

3.11の大震災が起こったのはちょうど、世界的な天候不良で農作物が不作のところにダブついた投機マネーが流れ込み、食料価格が高騰している時でした。命の基であるはずの食料までもがマネーゲームにさらされている時に、日本政府はTPPへの参加を表明し、今後サバイバルしていくには心ある人たちと自衛の道を選ぶしかないとの思いを強くしていた時でもありました。

なぜ、アメリカはこれほど執拗に日本にTPPへの参加を求めてきたのか。アメリカに利があるからに決まっています。
オバマ大統領は明言しています。「TPPの日本の参加で、アメリカ国民の雇用を拡大する」のだと。
ならば、日本だって、アメリカに利用されるだけでなく、これをチャンスと捉えて、日本の商品をどんどん輸出すればいい。
との論も、一見なるほどと思えます。

私は、この議論の前提となる"TPPの根っこにあるもの"を探ろうと、そのためにアメリカの資本主義の原点(歴史)を知るべきだと考えました。

そうして、調べるうちに分かってきたのは、アメリカのマルチナショナル企業と政府との深い関係。
我々は、世界の一握りの富豪たちが富を得続けるためのシステムに知らぬ間に組み込まれているということ。彼らの都合のよいようにアメリカ政府中枢の人々が選ばれ、政策が仕組まれ、歴代のアメリカ大統領が傀儡であったということ。黒人初の大統領・オバマさんも例外ではありません。TPPをオバマ大統領が強力に進めようとするのは、彼の後ろ盾となっているマルチナショナル企業からの圧力があるからです。

彼らが世界を動かすために牛耳っておきたい最大のものが、「エネルギー問題」です。
すなわち、エネルギーを押さえれば、世界を操れるということ。
その構図の中で原子力発電というビッグビジネスは動いてきました。

この「雑記帳」の第1回目に、私は丸山茂徳先生の著書『「地球温暖化」論に騙されるな!』(講談社)の解説と感想から、地球温暖化に対する懐疑論について述べました。
地球温暖化=二酸化炭素悪者説→だから化石燃料に頼らないクリーンな原子力の平和利用をという文脈の中での二酸化炭素削減キャンペーンには、かなり恣意的なものを感じていました。
案の定、IPCCの研究者の論文ねつ造がすっぱ抜かれ、地球温暖化=二酸化炭素説の怪しさが露呈しました。
低炭素社会への動きは歓迎すべきです。
しかし、その裏にエネルギーを意のままにしようとするある意思が働いていることを見抜き、生きていくために、命をつなぐために本当に必要なエネルギーについて本気で考える機会が今なのだと思うのです。