2010年11月 5日

ローズガーデン物語 第14回 豊かさの形(2)

waterperry garden6.jpg
桜庭さんのローズガーデン物語の14回目です。

自身が花やハーブのある暮らしの豊かさを味わい体験することの大切さに気付いた桜庭さんは、本場のガーデニングを肌で体感しようと渡英します。
職場の先輩との「男2人ガーデンめぐり旅」です。
当時は今のように旅行会社の英国ガーデニングめぐりツアーもなく、パンフレット片手の個人旅行。
果たしてどんな旅になるのでしょうか?
写真は 「ウオーターペリーガーデン」のインフォーマルなボーダーガーデン。レンガの壁に草丈や配色を計算して自然な風景を模すよう植栽されていて美しい。
************************************************************

豊かさの一つの形を求めて、平成11年8月下旬英国へ飛んだ。
夜の9時近くまで外は明るかった。朝晩は、長袖シャツでないと外へ出られなかった。
通りの随所にゴミが散乱していた。

私たちは、ビクトリア・コーチ・ステーションVictoria Coach Station(バスターミナル)から毎日1便出ているガーデン巡りのバスに乗り込んだ。
今は、そのバスはなくなっていると聞く。
当時は、曜日を変えて1日2つ、3つのガーデンを巡って夕刻元のバスターミナルへ戻るというバスが出ていた。
日本から予約していたバスのチケットに記載されていた番線に立つと、どうやら目の前のバスは行き先が違うようであった。
片言の英語でチケットを見せながらバスを誘導している黒人の係員に尋ねた。すると、
「今日は、○○から出る」
と聞かされた。
30くらい番線があり、バスが弧を描くように並んでいる。
時間が迫っていた。私たちは通路を走った。victoria coach station1.JPG
▲バスターミナルに並ぶバス。右から2台目がガーデンめぐりのバス。

30名程度乗れる小型の白いバスであった。乗車口で、
「このバスは、ガーデン巡りのバスか?」
と尋ねた。
「そうだ」
という返事に私たちは、安堵した。チケットを案内役と思われる中年の女性に渡した。制服は着ていない。
街中のおばさんが、バスに乗り込んでいる感じであった。引き替えにガーデンのパンフレットをよこした。
「あなたたちは、英語は話せるのか?」
と聞かれた。
「ほんの、ちょっぴり」
と答えると、両手を上げて、気の毒そうな表情を、ガイドは私たちに投げた。
バスの乗客は、10名ほどであった。
私たちは、若い日本人女性の3人連れを見つけた。
あとの5、6名はアメリカ人と思われる若い男女であった。

ドライバーが乗り込んできて、バスは動き出した。
街中を抜けてバスが郊外へ出ると、ガイドの女性は最初のガーデンの説明をはじめた。
進行方向を向き、ガイド席に座ったまましゃべりまくっている。
私たちには、ほとんど理解できなかった。

最初の訪問地、オックスフォード郊外にある「ウオーターペリーガーデンWaterperry Garden」に着いた。
ここは、園芸の専門学校に付属したガーデンであるらしい。
手元のパンフレットから何となく読み取れた。
見本と思われる庭園が複数あった。
日本にも農業高校に「造園科」や「環境デザイン科」と称する庭造りについて学習できる学科はある。
しかし、庭の種類を異にしても、ここまでの完成度を教材として維持している学校はないだろう。waterperry garden1.JPG
▲ウオーターペリーガーデン。植物で幾何学模様を配したお客さまをお迎えするフォーマルガーデン。

waterperry garden4.JPG
▲ガーデンに植栽するために多めに育苗した苗物を一般客に販売している。

waterperry garden5.JPG
テラコッタ(素焼きの大鉢)の販売所。

苗売り場も鉢売り場もほぼ無人であった。
ビジネスとしては疑問のあるところだが、おおざっぱで観光客が勝手に見学していく。
それでいて拝観料収入を得る仕組みはおもしろい。
同じことを日本でやるとすれば、きっときめ細かな対応を強いられて、人件費に喰われ結局撤退することになるだろう。お客が何を望み、何を提供できるのか?日本のやり方についても最大公約数で一度くくってみる必要がある。       (第15回につづく)