2008年10月30日

スタディグループ「アンミツ」始動!

スタディグループあんみつ

しばらくぶりの更新です。

社会生活において、たとえば仕事の中で人間関係の占める割合って大きいですよね。たかが人間関係、されど人間関係。私の場合、人と会って話を聞くことが仕事でありながら、実のところ人間嫌いでして・・・・・・いえ、すぐに顔に出てしまうんです(笑)。表面的な上辺だけの付き合いや建前の世界が苦手てで、逃げ出したくなります。最近ではだいぶ忍耐を覚えたものの、そうした付き合いには正直、時間がもったいない・・・・・・だって、生きている時間は限られているのですから。

私にとって仕事は社会とつながる大切な機会。社会の一員として何らか役立つよう機能したいと願いながら、今ももがき続けています。

トップの写真は、東京農工大の農業サークル「耕地の会」のOB/OGを中心としたスタディグループ「アンミツ」メンバーです。彼らとの出合いは、このサイトのコラムにも執筆してくれている滝沢くんが当時所属していた大学の研究室に私が取材に行ったことがきっかけ。以降、何かイベントや企画があるたびに彼がリーダーをしていた「耕地の会」に声をかけてきました。今や社会人となった彼らには、農業関係に従事している子も、そうでない子もいます。農家の、社会の役に立ちたいとの志を抱きつつも、日々さまざまな壁にぶつかり閉塞感に悩んでいます。その彼らが、私の独立を機に、「自分たちも何かを考え、行動したい」と集まってくれました。

「アンミツ」の名は、海、山、里の食材が使われていることから多様性を求める自分たちにぴったりであるということに加え、英語のand meet youもかけているとか。でも、ホントは第1回目の会合があんみつ屋だったことが一番の理由のようですけど(笑)。

このたび、おこがましいのですが、彼らに気づきの場を提供したいとミニセミナーとフィールドワークを提案しました。セミナーは私の企画、フィールドワークは彼らの企画です。

先々週土曜日は第1回のアンミツフィールドワーク。アンミツメンバーで都職員のJさんの企画で「東京農業を知る」をテーマに、中央線沿線の某果樹農家を訪問しました。



半径500メートルの農業。ブドウは開園2時間で完売。

 

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「桃栗3年、柿8年」というように、果物栽培は収益が上がるまでに時間のかかる農業です。昭和40年代、園主の父の代に野菜から果樹に転向したこの農園では、東京都育成品種や新品種を中心にブドウ、ナシ(和・洋)、柿、キウイを栽培しています。「衆目の中での農業」と園主がおっしゃっていましたが、東京で農業を行うことは、周囲を住宅に囲まれ、ある意味監視されているようなもの。だからこそ、ガラス張りの農業が安心と信頼につながり、互いに旬の恵みを分かち合う園主言うところの「半径500メートルの農業」へと結実したのでしょう。

この農園で作られていたブドウの一つが東京都の育成品種である「高尾(タカオ)」。こんなブドウがあるのを皆さん、ご存じでした? 市場では高級スーパーなどに少しだけお目見えする程度で庶民の口にはなかなか入らないブドウなのだとか。それがこの農園ではもぎとりできるとあって、開園と同時に2時間で完売!

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右の写真が「高尾」。本来はこの大きさですが、ジベレリンなどの植物性ホルモンを使ったり粒を間引く「摘粒」を行うことで、大粒のブドウへと仕上げていきます。






東京で生れた果物は東京の文化を背負っている。

「もうそろそろでしょう?」。毎日、果物が育ち熟していく様を目の当たりにしている近隣の皆さんから、それぞれの果物の旬が近づくにつれ園主は声をかけられます。まるで住宅街の真ん中にあるmy果物屋さん。しかも、その「お店」に並ぶ(生っている)のは全て樹生りの完熟。市場にはなかなか出回らない匠が手がけた高級品種の果物を、一番美味しい時期に自分の手でもいで買うことができる。こんなぜいたくはありません。

積極的に東京都育成品種を導入してきた園主が数年前に宅配便を止めた理由の一つが、「東京の多摩で生れた品種は、多摩の文化を背負っている。だからここで消費されるほうがいい」。
たとえば、ある日、地方が食材の供給をストップしたとしたら・・・・・東京は生きていけるでしょうか? 昨今、自給率論が高まり、国産食材を使う割合の多い飲食店を「緑提灯」として奨励する動きも出てきており、大変結構なことです。

しかしながら、農村=農業=地方なのではなく、東京にも農地はあり農家はいます。消費地がそばにある分、生活者が欲しているものを敏感に捉え、磨かれた感性の農家が多いのも事実です。東京も一地方都市。東京から始める小さな地産地消があってもいいと思います。食べる人のすぐそばで食料を作ってくれている農家こそ、もっと大切にすべき。私はそう思います。

 

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さて、肝心のアンミツメンバーの感想ですが、やはり、かつて農業に触れたことのある面々は園主の栽培技術の説明にも興味津々。畑は舞台、演者は自身であり園に訪れ作業を手伝ったり購入してくれる「サポーター」だと表現する園主の話は、大いに彼らの共感を呼んだようです。それにしても、「なぜ、農業をするのか?」の問いに「畑が俺を呼んでいるから」との園主の答えはカッコよかったですね。

 

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どこまでも利益を追求し拡大成長を続けることをミッションとする企業のビジネスモデルを農業に適用しようとすれば、どこかで無理がきてしまいます。

「成長し続けようとすれば何かを犠牲にしなければならない。農業がそれでいいのか」

アンミツメンバーの一人、Kさんがふともらした感想は、これからこのフィールドワークで、またミニセミナーで追求していきたい大切なテーマになりそうです。

そうそう、11月16日(日)に第1回目のミニセミナーを開催します。毎回、私のネットワークからさまざまな「いちぐう人」をお呼びして、私とのトーク、参加者とディスカッションするぜいたくなセミナー・・・というより「ゼミ」みたいなものでしょうか。第1回目の講師は、東北芸術工科大准教授の廣瀬俊介さんです。もうすぐ、このサイトの「いちぐう人」に廣瀬さんのインタビューをアップの予定(そっちも急がねば・・・汗)。ミニセミナーの様子もお知らせしてゆきますのでどうぞお楽しみに。