2008年8月18日

いつも「なぜ?」を大事にしたい。

しばらく充電期間をいただき、ようやく本格始動です!
ご心配をおかけしました皆さま、エールをお寄せくださいました皆さま、本当にありがとうございました。
これからはこのサイト『いちぐう』から、さまざまな人と地域を、私の視点と感性でお伝えしてゆきます。
私が日頃大事にしていること。それは「素朴な疑問」です。時々、世の中の出来事、メディアから流れてくること、巷に流布することに、「なんか変だ」と私の本能が叫ぶ時があります。
この「雑記帳」コーナーでは、そうした自分の直感を信じ、私なりに考察したこと、感じたことなどをつれづれなるままに綴ってゆきます。

ホントは地球温暖化でなく寒冷化!?

地球温暖化論にだまされるな!

第1回目は、ちょっと張り切って、大きく出ちゃいました。「地球温暖化論」です。物議を醸すこの議論を敢えて最初に持ってくるなんて、我ながら無謀ですね......この先が大変です(笑)。
最近読んだ『「地球温暖化」論に騙されるな!』(丸山茂徳著、講談社)。最初は本屋で見かけたもののちょっと扇動的なタイトルに買うのをためらいました。それでもつい手に取った理由は、昨今の日本中が地球温暖化防止=二酸化炭素削減を唱え、それこそがエコロジーな暮らしの第一歩だという論調に、私自身がなんとなく違和感を抱いていたからかもしれません。

著者の丸山氏は、東京工業大学教授で専門は地質学、専攻は惑星地球学。氏は、「地球は温暖化ではなく寒冷化している」と警告しています。地球は昨年あたりからすでに寒冷期に入っているのだと。
そういえば、今年の夏も暑かったけど、例年に比べて最高に暑かったのかというと、東京の最高気温を見る限りそうでもないような。8月なんて、「暑い!」と思った日でも34度、普段は32、33度。数年前は連日35度を超えるような暑さだったことを思うと、温暖化が進んで東京の夏の最高気温が毎年高くなる......そんな単純なものではなさそうですね。
さて、件の本の感想ですが、まず、専門的な地球温暖化論が非常にわかりやすく書かれています。以前に国の研究機関や大学の理系研究室を取材した時、専門的な話をわかりやすく伝えることの難しさを痛感しました。特に、科学の世界は客観的なデータをどう読むかが重要になってきます。憶測でなく、目の前にあるデータから言えることとなると、科学者は非常に慎重になり、言葉を選び、それが時に素人には小難しく曖昧にさえ聞こえます。
ただし、「わかりやすさ」は諸刃の剣。わかりやすさを追求すれば物事を単純化させることになり、結果、飛躍や暴論になりがちであることも事実です。本著にもあまりに断定的だと思う記述や説明不足の部分があることは否めません。その詳細や内容への評価は別の機会に譲るとして、本著を全面的に賞賛することはできなくても、それでも丸山氏の「地球温暖化を二酸化炭素犯人説として片付けるのはおかしくないか?」という疑問には私も同感です。

こんなにあるある、地球温暖化懐疑論。
ここでちょっと、インターネットで「地球温暖化 懐疑論」をキーワードに検索してみてください。ざざーっと出てきますよね。たとえばそこでヒットした中のアマゾン(amazon.co.jp)の「CO2温暖化懐疑論」だけを見ても、丸山氏以外に23冊もの地球温暖化論に疑問を呈す書籍が出てきます。また、フリー百科事典の「ウィキペディア」には、論点ごとに諸説が整理されています。
どうです?「このくらい知ってたよ」という声もあるかもしれませんね。正直、私は『「地球温暖化」論に騙されるな!』を読まなければ、改めて地球温暖化問題について調べることもなかっただろうと思います。猛省です......。これまでなんと科学という権威に対して妄信し、あまりに無知だったのでしょうか。
「世界的な科学者が集まったIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の結論だから正しい」、「マスメディアが報道しているから地球温暖化は疑いようのない周知の事実」。本当にそうなのでしょうか?
まずは疑ってみること。丸山論が正しいかどうかは別として、日本が、世界が二酸化炭素削減にまい進しているところに、異議を唱えること自体、とても勇気の要ることではないでしょうか。

地球温暖化防止ビジネスって、儲かる?
人間活動が地球の生態系に何らかの負荷を与えていることは事実です。また、丸山氏も指摘するところですが、このままでは確実に枯渇するであろう石油に頼る生活からの脱却、代替エネルギーの開発は急務であり不可欠です。
でもそのことと地球温暖化問題は同列のこと? 同次元のこととして捉えてよいもの? よしんば、実際に二酸化炭素の増加が地球温暖化を招いていたとしても、現在の猫も杓子もエコブームの中、エコをつければイメージがよいから、あるいはエコを標榜しなければビジネスにならないと、どこを見ても二酸化炭素削減がうたわれている昨今の状況に、私はなんとなく気持ち悪さを感じてしまうのです。
それと、二酸化炭素削減の排出権取引。地球温暖化防止の名の下に、二酸化炭素の量を実際に減らすわけでもなく、架空の世界で売り買いするというビジネスにどうもしっくりきません。
その上、二酸化炭素削減で「食べている」企業、団体、人たちが大勢いるという事実......。地球温暖化防止=二酸化炭素削減は今やトレンドです。今、これをテーマにすれば研究費や事業費がつきやすいのだと丸山氏も自著の中で語っています。
国の他の事業などでも、似たような状況を聞いたことがあります。年毎に事業のトレンドがあり、現場の真の喫緊の課題はさておき、そのトレンドをテーマとして企画したほうが予算が取りやすいという事情があるようです。

ものごとは全てどこかでつながっている。
「二酸化炭素の増加は温暖化の『結果』であって、『原因』ではない」そう、丸山氏は述べています。
IPCCは二酸化炭素が増えたから気温が上がったと見ているわけですが、これは丸山氏曰く「ニワトリが先か卵が先か」の難しい問題です。
丸山氏はじめ物理学者の槌田敦氏や気象学者の根本順吉氏は、IPCCとは逆の考え。気温が上がると海水が温められ、海中の二酸化炭素が空気中に出て行くというわけです。
また、地球の大気の成分の中で、二酸化炭素の占める割合は質量比で0.054%、体積比で0.04%というわずかなもの。このことも二酸化炭素だけが温暖化を決める要因なのかという丸山氏らの疑問につながっています。
そもそも、この世の中の事象は全て複雑に絡み合ってつながっています。一つの結論を導き出すにはそれらの糸を解きほぐし、さまざまな要因を考慮し、一つひとつ検証しなければなりません。もちろんIPCCはあらゆる角度からデータを出し、結論を出したのでしょう。
地球温暖化を考えるには、丸山氏によれば、気候変動の次の5つの要素を考慮しなければならないそうです。
1.太陽の活動度
2.地球磁場と宇宙線
3.火山の噴火
4.地球の軌道
5.温暖化ガス
また地球はこれまで10万年周期で同じ気候変動のパターンを繰り返しているとか。今後、地球が過去と同じパターンを示すかどうかはわかりません。
ただ、上記5つの条件を見ただけでも、気象学だけでなく、宇宙物理学、地球物理学、地質学、天体力学などの横断的な研究が必要であることがわかります。ところが、これが非常に難しい。先述した研究室の取材のときにも思ったのですが、やはり横たわるのが"専門性の壁"です。今、世界には2000もの専門分野があるとか。その小さな蛸壺の中に入ってしまっている研究者が実に多いのです。だから、自分の分野には詳しくても異なる分野の研究には門外漢、その上、研究者というプライドから知らないことがあっても「わからない」と言えないのだと、以前にある研究者が吐露していました。
このことは、何も地球温暖化問題に限りませんよね。たとえば、地域農業の問題一つとっても、解決のためには農業技術だけでなく、気象、地質、歴史、文化、さらには販路(マーケティング)などさまざまな分野を総合した知恵が必要です。
これだけ社会が複雑化した今、各専門分野同士をつなぐことが不可欠です。

地球温暖化問題と農業・食糧問題。
丸山氏は言います。
「気候変動の最も大きな要因は、『宇宙線照射量が支配する雲量』にほぼ決まっている」
また、「専門家たちの研究の中心は、雲量をもっと正確に定期的に観測するための人工衛星の開発と打ち上げへと動き始めている」と。
要するに、雲の量を制御が気候変動の鍵であると。そのためのユニークな(少なくとも私には)雲制御案を提示しています。
「一番力強い雲が発生しやすい場所は、最も暖まっている太平洋、つまり赤道付近です、この辺りに、メガフロートのような小島をたくさんつくります。品種改良して塩水で育つ稲を開発したうえで、このメガフロートに水田をつくり、稲を栽培するのです。植物が盛んに活動をすると上昇気流ができ、雲をつくる要因となり、地球全体の気温を下げる働きをします。この案は、理化学研究所の研究員である戒崎俊一氏のアイデアです。
二酸化炭素を削減するより、雲の量を制御するほうが効率的で、この提案は食糧問題をも解決する一石二鳥の方法なのです」(『「地球温暖化論」に騙されるな!』より)
このアイデア、結構魅力的だと思いませんか? あ、いえいえ、たとえ温暖化防止には太平洋上で米を作ることが効果的であるとしても、同じ食糧の確保を考えるならば、国内で今も増え続けているたくさんの耕作放棄地の活用をまずは考えるべきですよね。
ところで、「地球温暖化には悪いことばかりではない」とも耳にします。丸山氏も、「温暖化は大変けっこうなこと。その理由として生物多様性が一気に進む」と述べています。
少し前のBBCの記事にも、グリーンランドでこれまでよりも大きくて味のよいジャガイモが取れ始めたと載っていました。確かに、地球温暖化が進めば、これまで農業ができなかった地域で作物が取れるようになり、厚い氷に覆われていた地域で資源が採掘できるようになるかもしれません。
すると、何が変わるのか? 世界のパワーバランスが変わる可能性だってあるのです。
丸山氏によれば、今後5年から10年の間に「地球が温暖化するか寒冷化するか」の結論は、自然が出してくれるとか。果たして地球はどんな答えを出してくれるのでしょうか?
あまり知られていませんが、昨年夏、中国東北部地域は50年ぶりの冷夏、チベットでは50年ぶりの大雪が降り、野生のカモシカが大量死。7000万もの家畜が死に、約1億人が被災したそうです。丸山氏は、今年4月のチベットの暴動の直接的な要因は冷害にあるのではと自説を披露しています。
「チベットのような大陸内部は海から遠いため、気温の変化が早く起きる、つまりすでに始まっている寒冷化の影響をいち早く受けて、農作物の不作という結果になったのです」(『「地球温暖化」論に騙されるな!』より)
もし本当に寒冷化すれば、真っ先に心配しなければならないのは食糧問題でしょう。日本の現在の主要な稲作地帯は、東北、北陸、北海道です。しかも、食糧自給率は40%を切っています。 「人口が増え、食糧が不足したとき、人間は戦争への道を走る」
この丸山氏の言には私も賛成です。
「地球温暖化と農業」。実はこのテーマ、7、8年前、私が編集していた農業雑誌でも取り上げました。もしも地球がこのまま温暖化するとしたら、農業分野はどのような対応策を考え、研究しているのかを知りたくて。しかし、当時、地球温暖化と農業の問題を研究している研究者は日本には皆無、誌面では地球が温暖化した場合の日本の稲作の分布の変化について触れるに留めました。
現在、将来のさらなる温暖化に備えて、高温にも耐える米の品種改良などが進んでいるようですが、もし真逆の寒冷化に向かっているとなると、いったいどうなるのか?
経済性優先でなく、本来の植物の多様性の維持が、最終的には私たちの命を支えることになるのかもしれません。
未来を予測することはホントに難しいです。でもせめて「明日の利益でなく、100年後の利益」(丸山氏)を考えて、日頃からアンテナを張り、あらゆる情報に敏感にならなくちゃ、ですね。