2013年8月28日

「手」にこだわること

あれは、夕方のニュース番組だったでしょうか。
画面では、書店業界のPOP名人と一目置かれている、渋谷の蔦谷書店の書店員さん(女性)が紹介されていました。

お名前は失念してしまったのですが、彼女は、本のPOPを始めた人なのだとか。
彼女がPOPで推薦した本は必ず売れるということで、出版社から「読んで感想を聞かせてほしい」と、発行前の原稿が大量に送られてきていました。スゴイ! 出版不況と言われて久しい昨今、大変貴重な人材です。

おそらく、ものすごいペースで多くの本を読み、自身の心に響いた、そして読者の心に届けたいエッセンスを抜き取り、自身の感想を含めて紹介する彼女のPOPは言葉が生きているのだろうと思いました。

――どうすれば、消費者(読者)の目に止まる、本の購買意欲を掻き立てるようなPOPが書けるのですか?
その質問対する彼女の答えが、ステキだったんです!

「私がこだわっているのは、みんな『手』、なんですね。
手書き、手をかける、手間、手仕事、手づくりなど......。
最近は、効率化することと手をかけないことを同じことだと勘違いしている人が多い。
だから私はしっかり手をかける。手をかけなければ、伝わりません」(そんな感じのコメント)。

うーん、この本屋さん、行ってみたーい!!!
渋谷の蔦谷書店だからではなく、この書店員さんのいる本屋へ、彼女が奨める本の世界に触れてみたいと、心底思いました。

最近は、通信機器をはじめ便利な道具が増えて、かつては時間をかけて調べたり、計算したり、書いたり、覚えたりしなければならなかったことが、今ではタッチするだけ、クリックするだけで目当てのモノや情報を手に入れることができます。
だから現代では、面倒なことを要求するモノやコトは人気がなく、評価が低くなります。

かく言う私も、生活全般の中で電子機器やインターネットの恩恵に十分に浴しています。
でも、面倒を避けて便利さばかりを追求していくと、今よりもっと頭を使わなくなりますよね...。
「かつて大変だったことが今ではほぼ誰もが容易にできる」ということは、技術の進歩=人間の進歩・成長ではなく、逆に退化を促進していることだってあります。


ところで。
「感動しました」、「泣ける」
よく見かける本や映画のセールスコピーです。
このフレーズを見るたびに私は気持ち悪くなります。
日常生活の中で感動することってないんですか? そんなに泣きたいですか? 
感動ですら、人から与えてもらえなければ、できなくなっているんですか?

安直な安っぽいカタルシスを求める傾向が強まっています。
でも、それは結局は、上っ面の浅い感情表現と希薄な人間関係にいきつくのではないか。

そこで、冒頭の蔦谷書店の書店員さんの言葉です。

「『手』にこだわる」

自分の手を使うことを意識するだけで、丁寧さ・心をこめる・思いやりといった感覚を忘れずに生活できるような気がします。
感動と感動の涙の種はいっぱい落ちています、日常の中に。

これからも私は、「手」をかけることを大事に、生きていきたいと思っています。

2013年8月13日

聞くことは難しい、でも深くておもしろい

阿川佐和子さんの著書『聞く力』を読みました。
もともとベストセラーとかいうものを好んで読むほうではない私ですが、書店で平積みになっている同書を何気に手に取りました。
パラパラとページをめくるうち、阿川さんの文章にくぎ付けに。
もちろん、阿川さんの文章が巧かったことも一因ですが、それより何よりも、
「これって私のインタビュー方法と一緒だ!!!」
私自身のインタビュー経験、試行錯誤して編み出してきたと思っていた私なりの手法が、そこに書いてあったのです。

そう書くと、あの著名な阿川さんと、しかも、週刊文春で長年対談をしてこられた「プロ」と同じだなんて、なんと身の程知らずと思われることでしょう。
でも、ホントなんです。

続きを読む "聞くことは難しい、でも深くておもしろい"